【第381話】

命の指輪


竜騎士が装備していたと言われる、ブルーメタルの兜。

王者の剣や光の鎧、勇者の盾とは時代が違うが

これも古くから伝わる伝説の武具だった。




私は防具屋の主人から、ありがたくそれを受け取った。

あまり所持金は持っていないが、持っているだけすべてお金を払うといったのだが

防具屋の主人はいらないと言って、受け取らなかった。


そればかりか、防具屋の主人は今まで装備していたお父さんの兜の魔法石を

このブルーメタルの鎧にはめる作業、

そしてこの兜に、剣や鎧や盾と同じ紋章をつけてくれた。


オリハルコンほど強度ではないにしろ、硬いブルーメタルを加工したわけだから

防具屋の主人は鍛冶屋としても超一流の腕を持っているようだ。


「本当に、お金はいいんですか?」


「いいんです。

だってこれからあの大魔王を倒しにいくというんでしょ?

そんなお方からお金はとれませんよ。

それにこのブルーメタルの兜は、私の腕でルビス様と同じ紋章を象ったものをつけたわけで

これで、私もこの時代に名前が残せるってもんです」


そう言って店の主人は笑った。


「ありがとう…」


「それと…もう1つ、これも持っていってください」


そう言って、ちょっと悲しげな顔をして手渡されたのは、1つの指輪。


「これは命の指輪と言います。

指輪には強い魔力が込められていて、はめているだけで

所有者の傷を癒す効果があります。


…私の妻の形見です」


「…形見?」


「えぇ、私の妻も実は戦士でした。

しかし先日の大戦で召集がかかりメルキドに行きました。

そして魔物の手により帰らぬ人となりました」


「そうだったの…

だったら…そんな大事なもの、受け取れないわ…」


「いえ、いいんです。その方が妻も喜ぶでしょう」


「でも…」


「妻への悲しみはもちろん今でもあります。

できれば私が敵を討ちたい。

でも私は妻やあなたのように戦うことができない。

私ができることは、戦うことを助力することくらいです。

そして戦いが起こらない、そのような世界を…

もう妻のような犠牲者を出したくないんです…」

「………」


「………」

「…わかったわ。

でも…この指輪はやっぱりもらえない。

だってあなたの奥さんとあなたをつなぎとめるものだもの。

だから…この指輪を私に少しだけ預からせて。

そして大魔王を倒したら、報告に来るわ…奥さんと一緒に」

「…ありがとうございます」


第382話 祈り

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