【第382話】
祈り
ブルーメタルの兜、命の指輪をもらいうけた私はリムルダールで休んだあと、さらに南を目指した。
光の鎧のようにルビス様の加護によって傷が自動的に回復するのようなものではないが、兜の強度的には光の鎧に引けを取らないはずだ。
リムルダールを出発した後、何十もの敵が私をはばんだが、すべての伝説の武具をそろえ、ブルーメタルの兜で全身を完全武装した上、打撃による傷をおっても光の鎧と命の指輪の二重による自動回復で魔法を使わなくてもそれほど苦労せず敵を退けることができた。
森を越え、山を越え、休憩もおりまぜながらリムルダールを出て3日間歩くと小さい祠が見えてきた。あれがはぐりんが言っていた祠だろうか。私は持っている雨雲の杖に話しかけた。しかし雨雲の杖は何も答えてくれなかった。
祠の中に入るとひんやりしていたが、所々に明かりが通されていた。松明による火ではなく魔法による光のようだ。人は誰もいなく、寂しい。
祠自体はとても小さく、部屋の中心に何かある。近づいてみると大理石でできた小さい台みたい。
私はここで何をすればよいのだろう。はぐりんは雨雲の杖、太陽の石、聖なる守りをこの祠に持っていき祈れと言っていた。
そういえば、この小さな大理石の台は太陽の石がちょうど置けるような大きさだ。もし、ここに太陽の石を置くとすると雨雲の杖はどこに?そう思い左右を見ると、祠の右側に何か出っ張りがある。その出っ張りは、木の枝のようの二股に分かれており杖がたてかけられるようになっていた。
私は雨雲の杖をその取っ手にたてかけ、太陽の石を大理石の台に置いた。
聖なる守りを置くところは、どこにもなかったので私は首にかけて鎧の中にしまっていた聖なる守りを出して見つめて祈ろうとした。
しかし、何をここで祈ればいいのだろう。今の私の願いは?
私は今までのことを振りかえってみた。今まで本当にいろいろあった。
(アレフガルドは闇に包まれている。 もうこれ以上、人が悲しみ姿は見たくない…)
(カンダタ…ごめんね…私のせいで腕を…)
(クラーゴン、結局私はあなたを救うことができなかった…)
悲しい思い出がたくさんある。
(ホビットさんは今でもつらい想いをされているのかな。 愛する子供を失い、長年守った竜の女王様も亡くなり…)
(でも、竜の女王様…私がいままでやってきたことは間違っていないですよね?)
(ガライさんは素敵な人だった。 音楽により人が忌み嫌う魔物と会話できるなんて)
(はぐりん、私のかけがえのない、友達。 あなたと会えてよかった… あなたと出あえて、私はこの戦いの本当の意味を見出すことができた)
たくさんの出会いがあった。人間だけではない。種族を越えた出会い。
(悲しいこともたくさんあったけれど、忘れられない出会いもたくさんあった)
(私達人間と魔物は理解しあえる。その可能性がある)
(だって、私は彼らと知りあったのだから。 だからお互いが憎みあうのではなく、共存できる、そんな世界を作りたい…)
(人間も、竜も、エルフもホビットも魔物も、元ある自然の状態に戻さなければ)
(それにはこの闇に包まれたアレフガルドを解放しなければならない)
(私ができること。それは今まで出合って私に願いを託した人の想いを受けいれること)
(だから…だから…私は…大魔王の城に渡らなければ! お願い、力を貸して!!!!)
聖なる守りは突然激しい光を発した。
第383話 友の色
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