【第383話】
友の色
アレフガルド南東の祠についた私。太陽の石、雨雲の杖を置き、聖なる守りを持って祈る。今までのことを思いだしながら。
光を発した聖なる守りは、太陽の石に光を伸ばす。光を吸収した太陽の石は、さらに増幅して輝いた。発せられた光は雨雲の杖を照らした。
雨雲の杖は強烈な光につつまれ、祠の天上に一直線に伸びる。天上に光が届くと虹色の光が祠の中に反射した。
「きれい…」
そう思わずつぶやく。
しばらく見ることがなかった、虹色。アリアハンにいた時は何度か虹を見たことがあった。旅の途中、雨上がりのときに虹を見ることもあった。
しかしアレフガルドに来てから、空は常に暗く雨が降っても虹が発生することはなかった。
辺りは常に暗闇で、光といえば炎か、魔法による明かりのみである。
闇に飲み込まれた街の明かりはろうそくや松明などで、細々と炎で照らされ、戦いが始まれば、敵を倒すために魔法の光を発した。
アレフガルドに来てから光を見て、「嬉しい」と思うことはなかったかもしれない。久しく、虹を見たことがなかった。
いや…一度虹色をアレフガルドに来てから見たことがあった。
あれは勇者の盾をとりにいったときに沈黙の洞窟でサラマンダーの戦いのときではぐりんが、虹色の光を発したときだ。虹色の光のおかげで私はサラマンダーの呪縛から逃れられ生き延びることができた。
あのときは生き残るのに必死で虹を楽しむ余裕など当然なかったが今、雨雲の杖から発せられた光が天上に発生してできた虹色ははぐりんが発しているものなのでは、そう私には思えた。
はぐりんがいたから、生き残ることができた。はぐりんがいたから、ここに来ることができた。
虹から直接温度を感じることはない。
でも…なんだか…暖かい。
光はやがて1箇所に収束して、照らしつづける。輝きの中心は光が強すぎて見ることができなかったが、だんだんと虹色の光がおさまり、やがては聖なる守りから光が消えると太陽の石と雨雲の杖も光を発しなくなった。
光が収束したところを見ると、そこに虹色の色をした宝石があった。
第384話 虹のしずく
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