【第385話】
絶壁にかかったのは?
虹色の宝石を手に入れた私は、いよいよ大魔王の城に渡るため以前ラダトーム王が橋をかけようとしたリムルダール北西に向かうことにする。
祠を出たあとルーラでリムルダールに戻り食料や水など最後の装備をととのえ、リムルダールの街を出た。
北西に進むにつれ魔物達はの凶悪さは増していったが油断さえしなければ、傷を追うこともなくなっていた。
ただ…少し…寒い。雪こそ降っていないが、吐く息は白く光の鎧の中に厚手の服を着ていてもその寒さは伝わってくる。
リムルダールから北西に三日間歩くとやがて海が見えてきた。暗い海であり、何も見えない。辺りには、寒い地方にしか育たない特殊なものなのか、それとも魔王の城が近いせいか、あまり見たことがない植物が育っていた。
海沿いをさらに魔王の城へ向かって歩くと風がだんだん強く寒さも増してきた。やがて、断崖絶壁に行き当たる。
「行けるのはここまでか…」
絶壁の遥か向こうに確かに城のようなものがおぼろげに見える。城は黒い闇に包まれ、はっきりと見ることは出来ない。
また絶壁は風が強すぎるため、こちらから矢をうちロープを固定したあとあちらに人を送り橋を作るというのは自殺行為だとも思えた。絶壁から落ちたらまず助からないだろう。
そして遥か下に見える海を見ると、何本もの渦がまいている。あれでは船で渡ることも無理だ。
ラーミアがいれば、魔王の島に渡ることもできるかもしれないが強風のため、かなりの危険があるだろう。
私は風に吹き飛ばされないよう、注意深く道具袋から虹の宝石を取りだした。
「この虹の宝石があれば、あっちに渡れるの?」
はぐりんを疑うつもりはまったくないがどのように渡るのだろう。私が疑問をそうつぶやいたとき、虹の宝石がまばゆい光を発し、あちらの島に虹をかけたのだ。
「あ…」
暗闇の中に虹が発生する。まったく信じられない光景だ。
祠の中で見た虹もきれいだが、今度の虹は規模が違う。大魔王の城までかなりの距離があるのにその両端に虹をかけたのだから。
しかも大魔王の城にうずまく暗闇を橋がかかる部分は取り除いて虹がはっきりと見える。
やがて虹の宝石はそのうち私の手から消えてしまった。橋はかからない。かかっているのは虹だけである。
「ま、まさか…この虹の上を渡っていくの?」
第386話 大魔王の島
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