【第423話】

賢者の石の秘密


バラモスブロスの激しい炎で身を焼かれた私は死を待つばかりだった。

しかし父さんがくれた賢者の石が私の命を救う。

私にまとわりついている炎を振り払い、傷を癒したのだ。




バラモスブロスを倒した瞬間、頭を締め付けるような感覚がなくなった。

マホトーンの呪縛から解けたのだ。

私はベホマを唱え、傷を完全回復させたと同時に魔法が使えることを確かめた。


”竜の遺産まで持っているとは運のよいことよ”


ゾーマの声が頭上から聞こえてきた。

上を見上げるがゾーマの姿はない。


「竜の遺産って、いったい何!?」


私はゾーマに挑むように聞いた。


”おまえが持っている賢者の石は、竜の王族が持っていた無限の魔力を持った石。

我ら魔族と竜族が共同で開発した石だ。

その石を使えば、完全ではないにしろ、今のように魔法を使わずとも傷を癒すことができる。

その魔力は巨大で、自らだけではなく回りにいるものも癒すことができる”


魔族と竜族が共同で開発した石。

そういえば以前竜の女王様はおっしゃった。

世の中は、天界、魔界、地上界に分かれており、

三つの世界を共同化することで、本当の平和を造りあげようという動きがあったということを。


各界の代表が集い、魔界の代表は竜の女王様の夫神竜とゾーマだったとおっしゃっていた。

しかしゾーマの協力は偽りで、神竜を殺し、ルビス様を石化した、確かそんな話だった気がする。

偽りであったとはいえ、竜族と魔族が魔界で手を組んでいた時期があり

共同で武器や防具が生み出された、そうともおっしゃっていた。

その時に作られたのがこの賢者の石なのだろう。


竜の王族ということは神竜、もしくは竜の女王様が持たれていたものかもしれない。

しかし私が訪れた以前に父は竜の女王様にお会いになったことがあるのだろうか。


”王者の剣を含めた神具に竜族の宝。

なるほど、余の配下を退けるだけの運はあるようだ。

だがそれだけで我が最後の配下を倒すことができるかな”


そう言うと、目の前のバラモスブロスの遺体に稲妻が落ちた。

遺体が炎上する。


「何を!」


本来雷が発生する空間ではないのに雷が落ちたことと

バラモスブロスの遺体を燃やした二つのことに驚いた。


バラモスブロスはやがて、燃え尽き骨だけの存在となった。


”バラモスブロス、バラモス。

人間一人ごときに滅ばされてさぞ無念だろう。

お前達に最後のチャンスをやろう”


今度は天から、何か白い粉末のようなものがかかってきた。

…雪?

そんなバカな。

何故城の地下で雪が降るの。

でも目の前に広がる光景はネクロゴンドのバラモス城だし

ゾーマは雷を天空から落とした。


ゾーマなら雪を降らすことも可能かもしれない。

何しろアレフガルド全部を闇に覆う力があるのだから。

だけれど雪を降らせて何をするつもりなの?


私はその雪に触れてみた。

雪は鎧にあたっても溶けない。

そればかりか白い粉末がなんか、ジャリジャリする。


これは…何。


その白い雪はやがて、バラモスブロスの骨の上に積もっていった。

そういえばゾーマはさっきこう言った。


バラモスブロス、そして”バラモス”と。

何故、バラモスの名前が。

バラモスブロスの骨に積もる、白い粉。

もしや…この白い粉末はバラモスの骨?


そう思った瞬間、白い粉末の山が盛り上がった。


第424話 バラモスゾンビ戦

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