「街」レビュー

「街」レビュー
チュンソフト発売、サウンドノベル第3弾「街」。
数週間前に秋葉原で中古で1280円で購入し
序盤プレイで見事はまってしまったのですが
クリア後、期待をさらに上回る作品でした。
定価6800円、さらにベスト版(PS one Books)で再発売して2800円くらい
(Amazon.co.jpだと2100円で新品)で売られていますが
6800円で購入しても惜しくないと思わせたゲームでした。

●ゲームのイメージを思い浮かべるには?

8人の主要人物のシナリオからなるストーリーで、
有名なRPGに照らし合わせると
(サウンドノベルとRPGは全然別ジャンルのゲームですが)
「ロマンシングサガ」のようなさまざまなキャラクターからプレイできるのですが
ゲームのプレイ感覚は「ドラゴンクエスト4」に若干近いです。
「ドラゴンクエスト4」は「1章~4章」までそれぞれの
キャラクターのストーリーがあって5章に終結するという形ですが
これが、「1章~8章」まであって
どの章からも好きにプレイできて、同時進行するゲームです。

●あらすじ


(1)
・題名:「オタク刑事走る!」
 主人公「雨宮 桂馬」
 

ゲームとコーヒー牛乳が大好きのゲーマー刑事「雨宮 桂馬」
周りからはオタク刑事と呼ばれている。
パトロール中にゲームセンターに行って遊んでしまうほどのゲーム好き。
ある日、桂馬の目の前にあった渋谷のオーロラビジョンに、
突然「爆破」という文字が現れた。
ただのイタズラかと思われたが、桂馬はなにか不穏なものを感じる。
同時に怪しげな文章が書かれたチラシが配られ「雨宮 桂馬」は事件の捜査に乗り出す。

(2)
・題名:「やせるおもい」
 主人公:細井 美子
 

食べる事が何よりも好きな20歳の女の子「細井美子」
最近、増え続ける体重を気にも止めず、恋人の前でも、
豪快な食べっぷりを見せていた。
そんな美子は、恋人に痩せなければ別れると宣告されてしまう。
別れたくない一心で、美子はダイエットを始めるが・・・・・

(3)
・題名:「THE WRONG MAN 馬」
 主人公:馬部 甚太郎
 

脇役(とくにやられ役)ばかりを演じてきた「馬部 甚太郎」。
そんな時、偶然にも大抜擢のドラマのゲストの役をもらった。
ヤクザの組長役である。
しかし本人の内気の性格から思ったように役演じられず、失敗を繰り返す。
そのとき、自分とそっくりの男、「牛尾 政美」(下記(4))と取り違えられたことから
本物のヤクザに間違えられ、宝石強盗として追われることに・・・

(4)
・題名:「THE WRONG MAN 牛」
 主人公:牛尾 政美
 

元ヤクザ幹部だった「牛尾 政美」
しかし足を洗い一人の女性にプロポーズしようとしていた。
相手の女性が勤める宝石店に出向き、プロポーズをしようとしたその時、
以前の子分が強盗として現れる。
知りあいだった為、「牛尾 政美」は子分と共犯となり
プロポーズどころか、宝石を持った子分と逃げることに。
その途中に、自分とそっくりの役者「馬部 甚太郎」(上記(3))に取り違えられ
ドラマの演技(ヤクザの組長役)をすることに・・・・

(5)
・題名:「七曜会」
 主人公:篠田 正志
 

平凡な大学生、「篠田 正志」
彼はある会社に就職が決まって、その後順風満帆な生活を送るはずだった。
そのとき、「日曜日」という女性に脅迫され、
七曜会という謎の組織に入る事になった。
そこで「篠田 正志」は、自分にされたのと同じように
7人の人間を脅迫し一万円を受け取り、
その脅迫相手を七曜会の会員にするというノルマを与えられる。
しかし、何故、一万円という金額を脅迫して受け取るのか?
七曜会の目的とは?

(6)
・題名:「迷える外人部隊」
 主人公:高峰隆士
 

フランス外人部隊に所属している、「高峰隆士」。
今までに何人もの人を殺してきた。
3年ぶりに日本に帰国して、部隊を抜け出してまで日本に戻ってきた「高峰隆士」。
しかし平和な日本になじめず、自分の中に焦りと苛立ちを憶え、
喧嘩などの騒動を起こしていた。
何故、自分は日本に帰ってきたのか。何故自分は外人部隊に入ったのか。
自分の人生とは何だったのか、自問自答を繰り返していた・・・・

(7)
・題名:「シュレディンガーの手」
 主人公:市川文靖
 

人気のドラマ脚本家、「市川文靖」。
自分が眠っているうちに、何故か脚本が出来あがっているという、
不思議な体験をしていた。
その脚本は、どれも高視聴率を取っていたが、
それはただ高視聴率を取るためのもので、自分の書きたいものではなかった。
市川は本物の自分の書きたいと思い、一心不乱にそれを書き上げる。
しかし次の日、その原稿はすべて消去されており、
代わりに、いつものように書いた覚えのないドラマの脚本が出来上がっていた。
市川は、眠っている間に活動している、見えない敵とは・・・・

(8)
・題名:「で・き・ちゃっ・た」
 主人公:飛沢 陽平
 

高校生の「飛沢 陽平」
彼は学園のアイドルで、自他共に認める女好き。
これまで様々なと女性と付き合ってきた。
そんな陽平は、ある日、一人の女の子から呼び出さた。
「できちゃったんです」という衝撃の告白をされる。
しかもその会話を、学校一のキラワレモノでチクリ屋に聞かれていた・・・・

●「街」の購入前の印象

「弟切草」「かまいたちの夜」でサウンドノベルの大ファンになりましたが
実写版(様々な俳優を使っている)ということもあって
購入をずっとためらっていたソフトでした。
ドラマが好きでなく、あまり見ないということと
元祖サウンドノベル「弟切草」「かまいたちの夜」は
キャラクターが登場したときに
「シルエット」という形で登場しています。
そこで小説のキャラクターの容姿や声を自分で創造していきます。
サウンドノベルの面白さは、小説のように
自分でそのシーンやキャラクターの声を想像して
いくところに楽しさがあると思っていたからです。

●「街」の購入後の印象


◆常に飽ききさせない・・・・八人同時プレイの意味

不思議な体験でした。
8人同時に小説が進んでいくということが。
これは、冒頭でも書きましたが、
ドラクエ4で言えば、1章~8章までそれぞれの立場から
主人公がプレイできるという点です。
ただし、ドラクエ4やロマンシングサガと大きく違う点、
それは「同一の時間軸による同時プレイ」です。
「ドラクエ4」や「ロマンシングサガ」のような各キャラクターの主人公がいれば
そこの主人公のストーリーが終わるまで、違うキャラクターではプレイできませんが、
「街」は「5日間」の生活をどうやってすごすかということで
一日日が、それぞれ8人全員クリアをしないと、二日目をプレイすることができません。
また、それぞれの時間軸で、別キャラクターへの移動が可能なため
一日目の午後1時に違うキャラクターへ移動できるなんていうこともできます。
つまり、「八人が同時進行」なのです。
小説を読むときに、1冊1冊読むことはあるかと思いますが、
8冊同時に小説を読むことというのはなかなかない体験ではないでしょうか。
「八人のキャラクターで好きなタイプをプレイする」
というよりは
「八冊の小説を同時に読ませる」
というものなのです。
八冊も同時に小説を読んでいたら、どの話がどのようになったのか
わからなくなってしまうのでは・・・
そう最初は思いました。
購入前に「街」を買うのを私がためらった点は、実写版という理由以外に
キャラクターやストーリーがこんがらがってわからなくなってしまうから
あまりやる気がおきなかったと言う点もあったのですが
このゲームは
・一人一人の個性が強すぎること
・ある程度の時間単位で、各キャラクターの移動ができること
・過去には、どのキャラクターのどの時間に、いつでもさかのぼれること
・まったく関係ない八人も、思いがけないところでリンクされている(つながっている)
このことから、各キャラクターの名前と小説のストーリーはすぐに頭に入ってきます。
また、ある時間のキャラクターをやっていなかったから
他のキャラクターの行動を見逃したということもありません。
八人のプレイをそれぞれ、一日単位で全員クリアしないと次の日にちに進めないので
全キャラクターに一日をプレイさせなければいけないので
ストーリーを読み飛ばすということがないのです。
一つのストーリーが先が気になって、早く続きがよみたい!
という気持ちは本が好きな方なら誰しもがあります。
それが、8人「同時進行」なため、
どの主人公も先が気になるという思いにさせてくれるのが8倍、
このゲームの大きなところです。

◆主役キャラクター以外にも魅力的なキャラクターがいっぱい

この「街」というゲームは400人のキャラクターがでてきます。
あまり有名な俳優さんは出てこないですが
(脇役で登場した窪塚洋介さんくらいでしょうか)
主人公以外の脇役が、とても魅力的です。
前回、「街」購入時のときに少し述べたのですが
このゲームはサラリーマンや学生、普通の女の子達が主人公です。
そのため、脇役と主人公の差がそれほど差がないかもしれません。
脇役が出てきたら、そこにリンクが登場され
そのリンクを読み飛ばすこともできますが
リンクをクリックすれば、その脇役の詳細説明が出るという
親切なシステムが取り入れられているため、
脇役一人一人にも愛着が持てるようになっています。

◆脇役から主人公へ

これも、前回の文章で述べたのですが
普段は脇役としてもしょうがないほど影が薄い人間、
しかしその人たちにも一つ一つの物語は確かに存在するわけで
主人公になりえる、
自分達は一人一人が主人公であり、「街」ですれ違った人には
やはりそれだけの物語がそれぞれある、
それらの人々も「主人公」でいられる、
チェルトで言えば、主人公はチェルト、脇役はカンダタだけれど
カンダタの小説では彼が主役でチェルトは脇役である、
どんな街にいる人にもストーリーはある
どんな街にいる人でも主人公になりえる
「街」
そのようなゲームの無限性を感じさせるが「街」なのです。
この「街」はゲームとしての無限性を示してくれました。
そして・・・・

●クリア後

8人の登場キャラクターをそれぞれクリアすると
裏ステージとして
(以下ネタばれのため、一応隠します)

 

 


◆今まで脇役だったキャラクターが主人公になり
◆9人目、10人目のキャラクターが出現します。
(つまり、ドラクエ4で言えば、6章で出てくるデスピサロが
 ピサロの生い立ちから、最初からプレイできるというような感覚でしょうか。)
 

 

このゲームとしての見せ方が驚きました。
チュンソフトのサウンドノベル第4弾「かまいたちの夜2」より
第3弾の「街」の方が面白いと感じたのは
このような斬新なシステム、見せ方がすばらしいからです。

●膨大なエンディング

今回はエンディングとしては、完全終了が
各キャラクターに一個ずつありますが
バットエンディングとして120個近くの
エンディングが容易されています。

●お気に入りのストーリー

個人的に好きだったのが
(1)
・題名:「オタク刑事走る!」
 主人公「雨宮 桂馬」
(5)
・題名:「七曜会」
 主人公:篠田 正志
(7)
・題名:「シュレディンガーの手」
 主人公:市川文靖
の3つでした。
「街」関係のWebページを探してみると、かなりの数があったのですが
(1)
・題名:「オタク刑事走る!」
 主人公「雨宮 桂馬」
(5)
・題名:「七曜会」
 主人公:篠田 正志
は、どのページでも人気があったようです。
(1)の「オタク刑事走る!」はキャラクター的にとてもかわいく
コーヒー牛乳を常に片手に持っているという設定が面白く
さらにゲームやパソコンのことについて、相当詳しく
文章への引き込ませ方はすごいです。
そして最後の最後までストーリーがどんでん返しの繰り返しで
8人の中で最後にこのキャラクターをクリアして
スタッフロールが流れたときは感無量でした。
そして、(5)の「七曜会」は
「脅迫」という、ちょっと物騒な言葉がキーワードで
ゲームの内容にはちょっとまずいだろと思わせながらも
コミカルなストーリーと、組織への謎が少しずつ明かさせていくところと
主人公がたったの5日間でどんどん人間としてたくましく成長していく様子が、
見ている読者を爽快にさせてくれます。
(7)の「シュレディンガーの手」
これは正直、ちょっと残虐なシーンや、血のシーンが多く
最後もお世辞にもハッピーエンドとはいえないものなのですが
他の7作品とはまったく違った作品で、
主人公が、モノを作るときに苦悩や喜びを
狂気と一緒に描かれています。
よく
「天才と狂気は紙一重」
なんて言いますが
小説描き、イラスト描き、音楽つくりなど
モノを作る方を趣味や仕事とされている方は
ちょっと一度は見てもらいストーリーですね。
このゲーム、安田だったら、定価で買っても損はないと思いました。
街のソフトは、中古ソフトでもなかなか見つかりませんが
PS one Books として新品で2800円で売っているので
近くのビックカメラやおもちゃショップなどで探して
ぜひ買って、皆さんにもやってみてください。
「小説」か「ゲーム」のどちらかが好きな人なら
やってみて絶対損しないゲームですから!

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